堕ちた女神

別名、春を呼ぶ女神ペルセポネ

美しき女神達の話、時に嫉妬に、時に憤怒に、時に悲嘆にと、さまざまな感情に苛まれる姿は人間らしさもある。ただそれもあくまで人間の価値基準によってその神格を貶めた結果、誕生した姿だ。そうなると本当の姿は違うのだろうかと、そんな風にも思ってしまう人もいるのではないか。そういう意味ではアルテミスも処女神として祀られている一方で、狩猟を司ることから死や病厄をもたらす死神として語られていることもある。女神が一転して死神として謳われるのだから面白いものだ。

ただ中には望んでそうした堕ちた存在になったわけではない女神も存在している、それが先のプシュケに付いての項目で登場した『冥府の女王ペルセポネ』である。ペルセポネというのは冥府における名前で元々の名は『コレー』という、花の象徴として崇められている女神だった。主神たるゼウスと豊穣の神デメテルとの間に生まれた娘であり、美しき女神だった彼女がどうして冥府の女王として堕ちた存在として見られるようになってしまったのか、それはゼウスの兄弟でもある『冥界の王ハーデス』に見初めらえた事が全ての始まりであり、そして彼女にとっての不運だった。

美とは力。そして笑顔は美の剣です。

突如として攫われ、囲まれてしまう

ペルセポネという名前はハーデスに攫われた後に付けられた名だ、その象徴には冥府の女王として死者の減刑や赦免などの権限を有しているものだったが、ペルセポネ、もといコレーはハーデスの妻としてその身を預けることを了承していなかった。では何故彼女が冥府へと連れて行かれるようになったの課というと、それはとある日のことだった。

いつものようにコレーは母デメテルやニンフたちと幸せに暮らしていたが、そんな穏やかな日常にいた彼女の目の前に突如として出現したのは黒い馬に乗ったハーデスだった。明るく、生気に溢れた花の女神を連れて行けば少しでも冥界に華やかさが宿ると考えたゼウスの兄弟は、コレーの意思など知ったことではないとばかりに彼女を連れ去る形で冥府へと戻っていってしまう。最愛の娘が冥界へと連れて行かれてしまったことで、デメテルは急ぎゼウスにコレー救出を依頼する。しかしゼウスはハーデスが見初めたことはそれだけ意味のあることだとする、婚姻を認めてしまうのだった。正気の沙汰とは思えないほどと感じたデメテルはなんとしても救出してもらうために、自身の加護が通らないようにと閉じこもってしまって、そのせいで大地が荒廃していってしまう。

デメテルの反抗もあってさすがに何とかしなければならなくなったため、ゼウスは冥界へと赴いて交渉させる神として『ヘルメス』を遣わせた。その頃の冥府では、ペルセポネとして名前を受けたかつて女神と呼ばれた冥府の女王は、ハーデスからの求婚については断り続けていた。その後訪れたヘルメスとハーデスの間で丁重に交渉は進められていき、その甲斐あって何とか展開へと戻る算段をつけることに成功するのだった。これでようやく還れるとコレーは喜びを見せるが、その道中にとハーデスはペルセポネにあるものを渡すことになる。そしてそれを口にしてしまった彼女は冥府から逃れる事の無い縛りを受けることとなってしまった。

女神についてもっとくわしく

石榴の呪いとデメテルの悲しみ

ハーデスから渡されたのは冥界で栽培された石榴だ、そしてそれをコレーは間違って口にしてしまった。この瞬間、彼女は天界で生活することが出来なくなってしまった。冥界の食物を口にしてはいけないと言う掟が存在しているが、コレーは幸いにも石榴を全て食べたわけではなく、4口だけ食べた事が幸いだった。二度と冥界から出られなくなってしまったというわけではなく、一年の1/3以上を冥界で過ごさなければならないという枷を背負うことになってしまう。

ようやく娘を取り戻せたと思ったデメテルは悲しみ叫び、娘がいない時期になると大地には寒冷期が訪れるようになる、これが後に言う『冬の始まり』を表している。そしてペルセポネがコレーとしても展開に戻ることが出来る時期になると花が咲き乱れることから、花の女神としてもその色を持ち合わせるようになるなど、神々の中でも天界と冥界を行き来することが出来る不可思議な存在として崇められることになった。

花の女神として美しさの象徴として祀られていたコレーだったが、ハーデスがそうだっ攫ってしまえばいいんだ的な行動を起こしたことで冥府の女王でありながら、春の女神として象徴的な存在として崇められるようになる。美しさから冥界へと強制的に連れていかれたコレー、ペルセポネという名に恥じない慈悲は女神として、そして死の国においても崇拝されていった。

目指すは美魔女